【男性の不妊原因と治療法】精子形成障害と精子通路障害

精子形成障害について

無精子症

精液検査を受けた結果、精子が全く認められない時に無精子症と診断されます。精子濃度が500万未満の高度欠乏精子症や無精子症の男性の何割かには染色体異常が見つかるということがあります。特に無精子症の人の場合多く、クラインフェルター症候群と診断されることが多いです。

人の性別はX染色体とY染色体があり、XXなら女性に、XYなら男性になります。クラインフェルター症候群の人の場合、見た目は男性ですが染色体の組み合わせがXXYなどになっています。

また、Y染色体の中の遺伝因子に精子の形成にかかわるDAZ、RBMを含む遺伝子群がありこの部位に欠損が見られると、無精子症や高度欠乏精子症となってしまいます。

もしクラインフェルター症候群やその他の診断が出たとしても治療法がないわけではありません。精液の中の精子がゼロでも、精巣精子採取法で精子が取りだせることもあり1個でも精子が見つかれば顕微授精で受精させることが可能です。無精子症の人や重度欠乏精子症の人の場合には、タイミング療法などでは妊娠させることができませんから、こうした治療法を行うことになります。

顕微授精は精子が卵子の細胞膜などを突き破る必要がないので運動率の低い精子でも受精することができます。また採取した精子を遠心分離器にかけることで、不良精子を排除し状態の良い精子を選んで卵子へと注入することができます。

精子減少症

通常、成人男性の精子1㏄の中には平均で6000万個の精子がいます。この精子の数が1/3以下、つまり2000万個以下の場合には精子の数が少ないため精子減少症と呼ばれて自然妊娠が難しくなってしまいます。

精子減少症の治療にはいくつかの方法があります。まず、男性ホルモンを投与する男性ホルモン療法です。ホルモンの分泌が活発になるので精巣で精子をつくる機能を高めることができます。次に漢方薬やビタミンB1,B2などで精子の生産力を高めると言う方法もあります。漢方薬には肝臓や腎臓の働きをよくする効果もあるので服用すると精子の数が増えることがあります。性腺刺激ホルモン治療では精子をつくる能力を高めるホルモンを投与します。

いずれにせよ、精子の数を増やすことができればあとはタイミング療法と組み合わせることで、自然妊娠が可能です。

ストレスが大きい人は造精機能に影響が出るといいます。仕事が大事なのは分かりますが、過度なストレスは日頃から避けるようにしましょう。

精索静脈瘤

精巣から腎臓へと向かう静脈の弁で機能不全が起きてしまうと体内の血液循環が悪くなり、精巣周辺の血液もうっ血してしまいます。すると瘤のようなものが精巣の近くにできて、静脈瘤となります。これが悪化すると睾丸の温度が高くなってしまうので、精子が死んでしまったり運動量が減ってしまうため、自然妊娠させることができなくなってしまいます。瘤は見て分かることも多く、主に左側にできやすいという特徴があります。治療には手術が必要となります。

染色体異常

染色体に異常があると様々な不妊原因のきっかけとなる可能性があります。特にクラインフェルター症候群が有名ですが、軽度の場合には顕微授精をすることで、妊娠が可能です。ただし、染色体異常は遺伝する可能性が高いものです。妊娠後も問題なく子供を出産することができるのかリスクが高くなりますから、出生前診断を受けたいり着床前診断を受けるなど遺伝子についてよく主治医と相談するのが良いでしょう。

精子通路障害について

精子を造る機能に問題がない場合でも、精子の通り道が狭くなっていたり、閉鎖されていたりすると、精子が外に出ていくことができないので不妊症の原因となります。

 

精管閉鎖

造精機能には問題がないものの、精子を運ぶ経路に異常があるケースです。これは生まれつき精管が詰まっているケースや精管がないケースも含みますがヘルニアの手術や外傷の後遺症、性病の治療、精巣の炎症など後天的な原因で起こることもあるものです。

手術で治療をするのが一般的な方法となりますが状態によっては精巣上体や精巣から直接精子を取り出して顕微授精することもあります。

逆行性射精

射精したときに精子が尿道から膀胱へと逆行してしまう状態を逆行性射精と言います。多くは先天的なものが原因ですが、前立腺の手術や糖尿病が原因で後天的に逆行性射精になってしまうことがあります。

治療するのはとても難しいため、睾丸の中に残っている精子を取り出して顕微授精するのが一般的です。膀胱へと逆行してしまった精子は尿に触れた瞬間に運動率が低下し、死滅してしまいます。このため排尿で精子を放出したとしても尿の中にいる精子を使って人工授精することができません。ただ稀に体外受精できるケースもあります。

男性の不妊症の体験談

今となっては自分自身でも不思議なのですが、まさか不妊の原因が自分にあるとは思ってもみなかったんです。ところがいつまでたっても妊娠する様子のない妻に急かされて不妊外来へ訪れたところ、自分自身に不妊の原因があることが分かったんです。不妊=女性の問題、と勝手に思っていたので、この時にはかなり落ち込みました。

診断の結果は、精管閉鎖でした。数年前に椎間板ヘルニアと診断され手術を受けたのですがその手術の際に精管がふさがってしまったということでした。

すぐに詰まりを取ってもらう手術をしました。詰まりさえ取れれば自然妊娠も可能ということで、今は気長に子作りに取り組んでいます。

目次 赤ちゃんがほしい。不妊の悩みを解決